フィンテックで「給料の常識」を覆せ。
金融サービスの新境地に大志を抱く

髙木 賢一

きらぼしテック システム統括部 マネージャー
トーキョーにつくす人:デジタル化支援 | 髙木 賢一
技術の進化を積極的に取り入れ、
給料の受け取りをもっと自由に

近年、キャッシュレス決済の浸透に代表されるように、「お金の当たり前」が急速に変化している。この背景には、金融(Finance)と技術(Technology)を融合させた「フィンテック」の進化がある。フィンテックを活用したサービスは、デジタルに慣れ親しんでいる若い世代を中心に急速に広まっている。

このフィンテックを基盤に、世の中の当たり前を変えようとしているのが、「『はたらく』をもっと楽しく、『お金』をもっと便利に」を信念に掲げる、きらぼしテックだ。

2017年7月に誕生したきらぼしテックは、フィンテック技術を用いて先進的なサービスを提供している。

「多くの企業では、毎月1回、決められた日に給料を全額支給することが一般的です。こういった給料の当たり前を変えるべく、きらぼしテックは特許を取得しているサービス『前給(まえきゅう)』と、デジタルウォレット『ララPayプラス』の開発と提供を事業の柱にしています」

そう説明するのは、「前給」と「ララPayプラス」の開発をリードするメンバーの一人、髙木賢一(たかぎ・けんいち)だ。

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「前給」は、企業が従業員に日払いや週払いなど、給料を前払いする際の手続きをスムーズにするシステムのことを指す。フィンテックの概念すらなかった2005年にきらぼし銀行(旧東京都民銀行)で開発された。

従業員が前払いを希望する場合、申請や受け取りの手続きが煩雑になり、経理担当者の手間がかかってしまう。一方「前給」なら、あらかじめシステムに登録するだけで、前払いに関する様々な手続きを済ませることができる。給料の前払いは福利厚生や採用力の強化につながることから、大手企業から中小企業まで、導入企業は2000社を超えるという。

「ララPayプラス」は、2023年8月にリリースされたスマートフォンアプリ。お金の入金や支払いができるデジタルウォレットとして、「前給」の受け取り、セブン銀行ATMや銀行口座振込からのチャージ、個人間送金などが可能になる。銀行と財布の機能が一つのアプリで完結するようなサービスだ。

髙木はこの2つのサービスを起点とした新規事業開発を担当している。具体的には、利用者を増やす戦略や、サービスの価値を高める新たな企画の策定だ。

「企業専用の『ララPayプラス』の提案など既存のサービスを拡張する企画や、単発の仕事を請け負うギグワーカーと企業のマッチングサービスなど新たな企画を提案しています。働き方の多様化や人材不足など、企業の様々な課題やニーズを受けて、既存の仕組みを活用し、何か新しいサービスを提供できないかと日々構想を練っています」

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IT企業から金融の世界へ。
目指すは社会を動かすフィンテックの創出

髙木がきらぼしテックに入社したのは2022年。それまでのキャリアはインターネットの進化と密接に結びついている。おぼろげに自分の将来を想像しはじめていた中学生の頃、時代が変わる予感がした。

当時は情報を調べるのも、地図を見るのも紙が当たり前だったが、インターネットの登場で、ウェブサイトにたくさんの情報が載っていることに胸が高鳴った。

「すごく面白くて、将来はインターネットに関する仕事をしたいなと思うようになりました」

若き想いをそのままに、IT企業に就職し、Webサイトの制作などを通してインターネットの技術を習得した。Webサイトのコードを書いたりデザインを考えたりする中で、徐々に技術をベースにした企画の仕事に興味を持った。

複数の会社でWebサービスの立ち上げやコーポレートサイトの企画を経験。その中で、きらぼしテックのサービス開発にも携わるようになり、その縁で入社に至ったという。

「きらぼしテックのサービス開発に携わる少し前に、コロナ禍がはじまりました。キャッシュレス決済が普及する中で、そういえば金融分野の知識が薄いなと感じると同時に、フィンテックへの興味も高まっていました。そんなときに、きらぼしテックの顧問から『これから新規のサービスの内製化を進めたい』と聞いて、自分もメンバーになれたらと思い、きらぼしテックにジョインすることを決めました」

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金融業ならではの知識やルールをキャッチアップする必要はあったものの、これまで培ったWebサービス開発の知見を生かし、様々なアイデアをかたちにしてきた。何より社会に必要だと感じるサービスに携われることにやりがいを感じる。

「給料の受け取り方に柔軟性があれば、例えば、好きなアーティストのライブチケットを買うときなど、イレギュラーに出費が増えるようなタイミングで重宝します。また、働き方も変わってきており、ギグワーカーとして柔軟にお金を稼げる時代なので、給料の受け取り方もそれに合わせて変化するべきだと考えています。その変化をつくり出す側の立場でもあるので、責任を感じます」

カルチャーが生まれる過程に共鳴。
新しい金融の未来をつくる

新規事業開発と聞くと、革新的で創造的な思考から生まれると想像しがちだ。しかし、髙木のアイデアは常に顧客の声から生まれている。

仕事における重要な役割は「『前給』や『ララPayプラス』の営業に同行し、顧客の意見や課題を集めることです」と語る。顧客にヒアリングするときは、会社のホームページやメディアの記事、SNSをくまなくチェックするそうだ。

「既存のサービスを改修するにも、新しいサービスを立ち上げるにも、お客さまの課題を発見して解決策を考えることが前提にあります。顧客の声を拾い上げることは、新規事業開発の第一歩です」

新規事業開発は夢と希望に満ちた仕事だが、うまくいかないことも多い。しかし、「自分に対して負けず嫌い」な持ち前の性格を武器に乗り越えてきた。

「いいときも悪いときも、自分にとっては常にチャレンジです。新しい一歩を踏み出すときはもちろん、壁にぶつかったときに解決策を考えることも挑戦だと思っています。目の前の状況が変わっても、常に前進し続けることは大切にしたいですね」

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そんな髙木には、チャレンジ精神が刺激される、2つの趣味がある。

「ジャズ、ブルース、R&B、ヒップホップなど、ブラックミュージック全般が好きです。黒人が社会的な不平等や障壁を打ち破る過程で誕生した背景を知り、さらに心に響くものがありましたね。また、ブラックミュージックと関連している趣味ですが、スニーカー集めにもはまっています。スニーカーを起点にムーブメントが生まれ、一つのカルチャーをつくってきたところに面白さを感じます」

この2つに惹かれる理由を聞くと、少し考えを巡らせたあとに「自分自身も何か生みだしたいタイプの人間なので、共鳴するのかもしれません」と照れくさそうに笑った。

古い文化や慣習を乗り越え、新しい価値観やカルチャーをつくることへの憧れ。その憧れこそが髙木を突き動かす原動力なのかもしれない。

最後にこれからの挑戦について質問すると、こんな展望を語ってくれた。

「『前給』はお金の受け取り方を自由化するアイデアからスタートしました。金融をもっと自由に捉えて、より多くの人がデジタルを介して金融サービスにアクセスしやすい世の中をつくりたいです。『前給』や『ララPayプラス』もそのプラットフォームの一つとして発展させたいですし、新しい金融サービスも生み出したい。金融の利便性を高めることで、経済的なストレスから解放される、ファイナンシャルウェルネスを実現できると思っています」