デジタル支援をきっかけに、
日常に寄り添える存在へ

進藤 夏海

きらぼし銀行 立川支店 兼 昭島支店 営業課
トーキョーにつくす人:デジタル化支援 | 進藤 夏海
コロナ禍のある出来事が、
今のデジタル支援につながった

「私がデジタルキャラバン隊を頑張りたいと思ったきっかけがありまして」

そう話し始めたのは、きらぼし銀行入行1年目(取材当時)の進藤夏海(しんどう・なつみ)。支店の営業課でお客さまの預貯金や住宅ローン、年金などのお手伝いをするほか、デジタルが苦手なお客さまに対面で支援を行う「デジタルキャラバン隊」の一員としても活動している。

「89歳になる祖母が趣味で俳句を詠んでいるのですが、コロナ禍で仲間と集まれなくなり、代わりにZoomでオンライン句会を開くことになったんです。でもスマートフォンの使い方も知らなければ、もちろんZoomも初めて。『なっちゃん、教えて』と言われ、祖母に操作を教えました。わからなくなったらまた聞いてね、と手順を紙に書いて渡しておいたのですが、しばらくするとすっかり一人でできるようになっていて。びっくりする私に『なっちゃんのおかげだよ、ありがとう』と言われ、なんだかとても嬉しくなりました」

トーキョーにつくす人:デジタル化支援 | 進藤 夏海-02

いきいきとオンライン句会へ参加する祖母の笑顔に、「自分も誰かにつくすことができるんだ」という自信が生まれた。大学時代は運動部のマネージャーを務め、きらぼし銀行に入行したのも生まれ育った東京のために仕事がしたかったから。他者への貢献意欲を持つ彼女にとって、デジタルキャラバン隊は思いがけずやりがいに満ちた機会となった。

支援するけど、押し付けない。
そのバランスを取りながら

そのデジタルキャラバン隊で、進藤は具体的にどんな活動を行っているのだろうか。まず一つは、ご来店されたお客さまにスマートフォンの操作やデジタルサービスに関する困りごとをヒアリングし、疑問やお悩みを解消すること。ご来店時に限らず、ご自宅に訪問する際にも同様にヒアリングをすることがある。その他には、年金受給日に開催している年金受取感謝デーに合わせ「スマホのお困りごと相談会」も実施している。

いずれも無料のサービスで、ご紹介する内容も銀行手続きに関することだけでなく「電車の乗り換え検索の方法」や「キャッシュレス支払いアプリの使い方」などさまざまだ。「スマホをこわいものと思わず、便利なツールとして使っていただくための架け橋となれたら」と、進藤は自身の役割を捉えている。

「先日訪問したお客さまは『PayPayを使ってみたいけど、孫に会う機会も少なく、聞く相手がいない』とおっしゃったので、『じゃあ今から一緒にやりましょう!』とアプリをダウンロードし、そのまま近くのコンビニエンスストアに行って一緒に使ってみました。次にそのお客さまにお会いしたとき『あれからいつも使っている、すごく便利になったよ、ありがとう』と言っていただき、本当にやってよかったなと思います」

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きらぼし銀行に入行する前の進藤は、銀行業務といえば預金・融資・為替のいわゆる三大業務だけだと思っていた。しかしデジタルキャラバン隊に加わったことで、デジタルも含めて暮らし全般をサポートする、サービス業としての銀行の在り方を知った。「何か私にできることがあれば、何でもお聞かせいただきたいです。お困りごとを解決して、生活がより豊かになって、明るい姿が見られたら私も嬉しいので」とにこやかに話す進藤。この思いやりに満ちた人柄は、お客さまとの距離をぐっと縮める大きな武器になっている。

しかし一方で、すべての支援がいつも上手くいくとは限らない。例えば進藤の世代にとっては当たり前にこなせるパスワード管理も、デジタルに慣れないシニア層にとっては一苦労だ。

「パスワードをすぐに忘れてしまい何度もやり直すことになったり、UI銀行のログインに何度も失敗し、カスタマーサポートに電話しても解決できず諦めてしまったり。デジタルとの向き合い方にはいろんな考えがありますから、抵抗のある方に一方的に押し付けるのも違います。相手を尊重しながら、適切なアプローチ方法をいつも考えています」

相手を尊重しながらも、取り残すのではなく、できる限りのサポートを働きかける。デジタルに対する世代間ギャップが広がり続ける今の社会において、こうした寄り添いの必要性は今後もあり続けるだろう。

つくすとは、
誰かの日常に自分があるということ

デジタルキャラバン隊では、シニア層やデジタルに苦手意識を持つ方への支援ノウハウを共有すべく、定期的に研修会を開いている。普段は別々のエリアで活動するメンバー同士が集まって、実体験をシェアし合うほか、シニア向けデジタルサポートの専門家による講習も実施している。まだ入行一年目の進藤にとって、この場は役立つ発見の連続だと言う。

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「例えばお客さまにお声がけする際、いきなり『このスマホアプリ使ってみませんか?』と押し付けるのではなく、『使わないアプリを消せるってご存知でしたか?』と相手の状況や気持ちを汲んで話しかける。そうすれば、お客さまのほうから『知りたい、教えて』と歩み寄ってくださると教わり、なるほどと思いました。デジタルキャラバン隊がなければ、どうやってお客さまと向き合えばよいかわからなかったと思うので、営業の基本的な力をつけるという意味でも重要な機会になっています」

デジタル支援を一つのきっかけに、お客さまの暮らしをより良くするためのアプローチを少しずつ確実に体得している進藤。最後に、自分自身にとって「つくす」とはどういうことかを聞いてみたところ、しばらく熟考した後、はっきりとこう答えた。

「その人の日常に、自分という存在があること」

銀行も、デジタルツールも、私たちの日常とは切っても切り離せない。それはつまり、そこで働き、支援する人の存在もまた、私たちの暮らしに不可欠な存在であるということだ。一つひとつの支援や関わり合いを通じて、進藤は自分の存在意義を、しっかり自覚していた。